クライアントインタビュー
日本テレビ「ZIP!」のYouTube施策

日本テレビ放送網株式会社様(以下、日本テレビ)は、地上波でのテレビ番組の制作に加え、放送とインターネットを掛け合わせたデジタル関連事業にも力を入れています。
今回は、ICT戦略本部担当部次長・高橋秀明さんに、Viibarと共同で行っている情報エンタテインメント番組「ZIP!」のYouTubeチャンネル施策についてお話をうかがいました。

日本テレビ放送網株式会社
ICT戦略本部 担当部次長
高橋 秀明 さん

株式会社Viibar
テレビパートナー事業部
プロデューサー
坂井田 昌美 大阪・毎日放送のバラエティ、情報、ドキュメンタリー番組などの制作に約10年ディレクターとして携わる。
2018年4月にViibar入社。NHK「NHK1.5ch」のグロースや日本テレビ「ZIP!」のYouTubeチャンネルを立ち上げから担当。
高橋さん、本日はよろしくお願いします。
最初に、「ZIP!」YouTubeチャンネル施策の概要を教えてください。また、高橋さんは普段どのような業務をご担当されていますか?
私はICT戦略本部に所属し、YouTubeをはじめとしたショートコンテンツの制作・運用全般を担当しています。
ZIP!公式のYouTubeチャンネルでは、番組で放送したコーナーの切り出しの他、オリジナルコンテンツもを配信・運営しています。
「ZIP!」YouTubeチャンネル立ち上げのきっかけと目標
2018年10月頃に弊社にお話をいただきましたが、そこに至るまではどんな取り組みをされていたのでしょうか?「ZIP!」YouTubeチャンネル施策立ち上げのきっかけを教えてください。
ZIP!は朝の看板番組で、立ち上げの時からショートアニメやMOCO’Sキッチンなど、配信向けのショートコンテンツを意識した作りのコーナーがいくつもありました。当時からそういったコンテンツを日テレTADAやTVerなどで配信をしていて、早い段階から先進的な取り組みをしている番組だったんですね。
そこから徐々にZIP!のブランド支援の一環として、YouTubeでアカウントを立ち上げよう、との話が持ち上がりました。
Viibarさんに声がかかったのは、単純な番組の切り出しだけではなく、オリジナルコンテンツを作っていくことにもチャレンジしたい、という流れがあったからだと思います。
今でこそ、テレビ番組のYouTubeチャンネルは見かけるようになりましたが、約2年前は、業界内でもまだ「やりたいけど出来てない」という感じだった気がします。
日本テレビさんの中でもZIP!チャンネルの立ち上げは早い方でしたか?
早かったと思いますね。
色々と先進的な取り組みをしていく中で、ZIP!は配信向きのコンテンツを持っていたので、やりやすかったんじゃないかな、と思います。
YouTubeチャンネルを立ち上げる最初の打ち合わせの時に、番組総合演出の方から「テレビで番組を見てくれる方が、通勤・通学時にそのままYouTubeでも見てくれるような、視聴者の生活の一部になるようなアカウントにしたい。ZIP!ファミリーとなるようなユーザーを増やしていきたい」との心意気を頂戴して、ZIP!チャンネルの目標になったと受け止めています。
テレビ局がテレビ以外のプラットフォームでファンを広げていくことは指標・目標の一つだったのでしょうか?
既にTVerでの配信は早いタイミングでやっていたので、何か新しいことをやっていくと面白いだろうという思いはあったと思います。そういった取り組みが必要な認識は皆の中には刷り込まれていた時期でした。
若年層への訴求という意味で、通勤・通学など、番組が終わった後も続けてアプローチできることはすごく理解できます。
Viibarをビジネスパートナーとして選んだポイント
Viibarをビジネスパートナーとして選んでいただいたポイントは何でしたか?
数年前にViibarの方とお話する機会があり、僕らは番組を切り出して配信をしている中で、Viibarさんは動画制作からプラットフォーム配信、レポートまでをパッケージにして、自社でセールスを行っていることを知りました。自分たちが基本的に視聴率というモノサシでビジネスをしていた中で、別のスケール・指標で商いをやっている人がいることは一つの発見だったんですよね。
僕らがインターネットへの展開で考えるのは番組の一部を切り取った二次利用的なものなのですが、せっかくYouTubeで展開をするのであれば、プラットフォームにあったコンテンツができるんじゃないかと。
Viibarさんが知見をもっている動画制作の部分。オリジナルコンテンツでどういったものが再生されるかなど、分析なども含めて御社にお声がけをさせていただきました。
テレビとの違いは?
実際にZIP!チャンネルを立ち上げて、テレビとの違いは感じましたか?
YouTubeはじめ外部プラットフォームそれぞれのクセを把握することができました。
必ずしも看板アナが出演するような、テレビで人気のあるコーナーだけが動画としてヒットするわけではなくプラットフォーム毎にターゲットやヒットするコンテンツも異なる。
僕らがテレビ屋として持っている感覚をそのまま投げ込んだとしても、僕らの想像しているようなことが起こるとは限らないことが分かりましたね。
確かにそれは自分も実感としてありますね。
YouTubeとYahoo!アプリでは跳ねるコンテンツが違うし、TVerなどのともまた違う。
外部プラットフォームを利用するに当たって何を意識しなければならないのかを逆に突きつけられる、という学びを得ることができました。
私もViibarに入る前はテレビ局でディレクターをしていたので、テレビってゼロから1を作る作業かなと思っていて。面白い企画があったら「面白いじゃん、やってみようよ」という感じの広がり方だと思っています。そうではない広がり方を求められるのは、テレビ局がYouTubeチャンネルをやる上で一つの壁になると感じています。
番組制作者からすると、ちょっと素直に乗っかれないところもあるんじゃないかな、と思うんですが…。
それはありますね。どうしてもテレビの感覚としては企画から入ってしまう。企画があって、そこに出演者が誰で、という形ですね。
YouTubeは刺さりやすい人は誰で、その人が何をすると流行るんだろうか?と逆算で作っている。それがタレントの個人チャンネルが盛り上がってきた一つの要因でもあると思います。
番組制作側の方々は、この1年以内でYouTubeに対する温度感も高まってきているのでしょうか?
制作者の興味はYouTubeに限らず、常に新しいものを取り入れたい、遊んでみたいという感じだと思います。それがまず最初にあった上で「どうやったら再生数が伸びるのか」「チャンネル登録者数が伸びるのか」を考えますが、テレビだと番組制作側が視聴率を細かく見ていくところを、YouTubeだと皆が分析できるわけではないのでそこを我々がどうサポートできるかですね。
YouTubeチャンネル施策において難しい、大変だと感じる点
Youtubeチャンネル施策において難しい、大変だと感じる点はどこですか?
やはり1番はターゲットのボリュームゾーンが違う点ですね。
YouTubeはテレビの視聴者層と比べて、かなり若年層に寄っているので見方も全然違います。またコンテンツの質だけでなくブラウジングや関連動画からの流入が重要になるので、質にこだわって作るよりも流行っているものに乗っかった方が正直早い(笑)。
Viibarの良さとは?
自分で聞くものアレなんですが(笑)、Viibarの良さを教えてください。
僕が向き合っているメンバーの皆さんで言うと、テレビの制作に関わっていた方が多いので、「テレビってこうなんです」といちいち説明せずに済むという有り難さを感じます。
テレビの世界もネットの世界も両方知った上で落とし所を見つけてくれるのは、楽というか、話が早いと思う部分ですね。
そう言っていただけるとありがたいですね。他局さんでも、他社さんだと文脈が伝わらないケースがあり、「番組とは?」から説明することに苦労していると聞きます。
最後に今後チャレンジしたいこと、思い描いていることはありますか?
動画市場が大きくなってきている中で動画を見ることが当たり前になっています。テレビだけではなく、あらゆる媒体で見ることが普通になる。
自分の役割は、配信上でいかにプレミアムなコンテンツを作っていけるのか。簡単にいうと面白いコンテンツを作り、できればマネタイズもしていきたいと思っています。
携帯を持つと固定電話をかけなくなるように、テレビ以外のタッチポイントを増やすことが望まれるし当たり前になっていく。以前のようにはもう戻らないと思うので、そこに対して整理し、ユーザーニーズに応えることに取り組んでいきたいです。
確かに、「もう元に戻らない」というのは、テレビの歴史の中で一番大きな動きに感じます。
テレビだけじゃなく、様々な人が色々なコンテンツを作り発信できるようになっているので、当然参入障壁も低くなります。選択肢が増えてくる中で、どれだけ選択してもらえるようにするか。
加えて、本当はコンテンツの質をどのように測るかという議論も世の中的に起こってくれるといいな、と感じています。
本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。