広告やWebサイトのコンテンツ、教材にも動画を採用し、教育業界の中でも先駆的なマーケティングを実施している株式会社Z会。顧客のニーズに合わせたさまざまな方法で、動画をフックに新規ユーザーの獲得につなげている。動画を使ったマーケティングの手法とユーザー獲得の為の戦略を聞いた。

プロフィール

  • 神谷元貴氏
    2007年株式会社Z会入社。入社後、小学生事業本部に配属、教材編集の仕事を経て、学習支援担当としてコンサルタント業務に携わる。2012年よりWEB担当として動画を含めたデジタルマーケティングを推進している。

メッセージが深く伝わる、動画というメディアの力

Viibar 動画を積極的に使い始めたきっかけは。

神谷氏 スマートフォンやSNSの普及により、色々な情報が溢れかえる中、ユーザー同士のコミュニケーションの中に、企業としてのメッセージを送る手法を模索していました。そんな時、Viibarさんから動画どうですか、というお話をいただいたので作ってみることにしました。

Viibar 動画を使い始めていかがでしょうか。

神谷氏 まだまだこれからの状態ですが、一方で動画は他の広告手法と比べて、ものすごく強くメッセージが伝えられる、とてもパワーのある手段だなという実感があります。それをマーケティング全体のどこに位置付けて活用していくのかという点を模索中です。

Viibar 教材の説明をするため、テキストや写真だったものを、動画に変えたことでの反応の違いはいかがですか?

神谷氏 情報がより心に残るようです。紙や広告に比べて動画は、音や雰囲気なども組み合わさって、情報の伝わり方が深いという印象を受けますね。その後、社名検索してもらえたりとかはあります。マーケティング部署にいる以上、目指すべき成果点というものがあります。それは簡単に言うと、資料請求や入会をしていただくことなんですが、周りからも動画はパワーがありそうだ、という期待が高まっています。

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テレビを見ない若年層に向けて、TVCMからWeb動画へ予算をシフト

Viibar Web動画とテレビCMの役割をそれぞれどのように定義されているか、教えて頂けますか。

神谷氏 Web動画はCMと違って、ターゲティングしやすいことが特徴です。テレビの力が弱くなったとはいえ、まだまだ多くの人がテレビを見ているので、どんな立場の人が見ても不快にならないものを作るのがテレビCMと考えています。

逆に、Web動画は見る人の目線に合わせて、内容を絞ることができます。マス広告よりテーマを絞って伝えやすいんです。あと、Webだとクリック等の動作にもつながりやすくなるのがいいところだと思います。更に、時間尺も自由なので、工夫すれば5分間の映像だって見せることができます。可能性がまだまだあるので長い目でみて工夫していきたいです。

Viibar Web動画のプロモーション対象はどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

神谷氏 先日、「正直村と嘘つき村」という動画を制作しましたが(下部動画参照)、Z会を知らない保護者に気づきを与え、共感・シェアされたいと考えて制作しました。

※この動画は、Viibarで制作された動画ではありません。

Viibar 動画の予算はどのように獲得するのでしょうか。

神谷氏 マス広告(主にCM)費用から予算を出しています。CMを制作して配信する費用を考えると、Web動画のコストの方がリーズナブルであることと、テレビは様々な視聴層が見ていて、特に高齢者が多い一方、Z会の通信教育の商材は幼児~高校生・大学受験生が対象です。テレビを見ている人数自体が減少していると言われる中、リーチしたいターゲットが狭いという事情から、Webの効率は高いはずなので、Web動画に予算をアロケーションしつつある感じです。Web動画を起点として広げていくようなモデルを作りたいと思っています。

Viibar 「正直村と嘘つき村」の反応はいかがですか

神谷氏 Z会では、2021年の大学入試改革を見据えて、将来社会で求められる力を養成する講座として「総合」を2016年3月より開講します。この動画は、それをプロモーションする目的で制作しました。他社に先駆けて発信することで教育企業の最先端であることをアピールしていきたいと考えたからです。Web動画なら「Z会が何か新しいことを始めた」ということを強く印象付けられる、と。
大学入試制度改革は、現在の中学1年生に始まり、それ以降に中学に入学されるお子さん皆に関係する内容となります。そのため、この動画は、「教育の変化」を体感していただけるよう、最後まで見たときに、「なるほど!」と受け入れやすいように少し長めの動画となっています。今の中学生が入試を受けるとき、いち早く新しい教科の内容に気づかせてくれたのはZ会だったというふうに感じてもらえることも期待していますので、かなり先を見据えた認知・好感度向上施策です。

Viibar それを見たお客様からどんなメッセージがありましたか。

神谷氏 見ているのは、Twitterのつぶやきですね。「何かスゴイモノを見た」というのはつぶやかれてましたね(笑)。「映画が始まるかと思った」や「久しぶりに広告動画を最後まで見ちゃった」など。

Viibar 今まで作った動画の中で、一番反応が良かったものはどちらでしょうか?

神谷氏 そうですね、反応と言うと2年くらい前になるんですが、新海誠監督に制作して頂いた「クロスロード」は、アニメーションファンの方を中心によく拡散しましたね。広告はほぼ打ってないんですけど今250万再生を超えるレベルになっています。

※この動画は、Viibarで制作された動画ではありません。

Viibar 今まで制作した動画で、こういう時にはこういうパターンというような動画マーケティングの勝ちパターンのようなものは御社でお持ちなのでしょうか。

神谷氏 届けたいお客様をイメージして、こういうものがいいよねと毎回想像しながら仮説を作っています。それはパターン化というよりはViibarさんとの話し合いで新しい仮説を検証している感じです。私たちも動画のプロではないので、動画マーケティングのプロであるViibarさんにこういう見せ方がありますよとご紹介いただくと、なるほど、と気づく事が多いですね。

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クリエイターを選べるから、ブランドイメージを形にできる

Viibar どんな点を重要視してパートナーを選ばれてますか?

神谷氏 私たちの考え方を理解してくださっている方をパートナーと考えています。動画は情報量が多いので、全体的なトーンアンドマナーやZ会のイメージとの合致が重要になってきます。Viibarさんには日本中の様々なクリエイターが登録していて、オンラインでクリエイターの実績を確認できます。なので、ストーリーを作っていく時に雰囲気や感覚を掴んでくれそうだなとか、この人だったら一緒に作っていけるかなと感じられるかなどで、クリエイターを選ばせてもらっています。たくさんある選択肢から選べるのは嬉しいです。
昨年は、会員になって頂いた方に向けて、iPadやタブレットでのサービスの使い方のご説明動画をViibarさんと一緒に制作しました。来年の春からの小学生には、タブレット版の新しい教材をご提供するのですが、チュートリアルを文書マニュアルのような形でお渡しするより、実際に動いている、使用感のわかる動画の方がイメージしやすいと思ったんです。その動画の質がとても高く、うちの会社の中ですごく評判が高いんですよ。他部署のメンバーにどこで作ったかを聞かれてご紹介することも多いです。

Viibar iPadスタイル説明動画は御社の中で具体的にどんな評判でしたか?

神谷氏 実際の学生の日常に入り込んで、生活の中にあるとこんな感じなんだということを見せられた点がとてもうまくいったと思います。iPadで勉強する生活っていいんじゃないのというイメージがついた所が、すごく評価が高かったかなと思います。自分自身でもそう感じました。

Viibar 動画の配信等はどう依頼されているのでしょうか。

神谷氏 最近で言うとYouTube、Facebookあたりは総合代理店さん経由で出稿しています。一番出稿するのはYouTubeなのですが、プレロール形式で、視聴者が本当に見たい動画の前に広告が差し込まれて出ますよね。スキップ率が90〜95%なので、プレロール広告の効果は落ちてきているように感じています。視聴者、ユーザーのやりたい事を邪魔する、そんな広告の出し方で良いのか、と考え始めています。

Viibar 制作中のお話になりますが、Viibarでの制作の進め方はどうでしたか?

神谷氏 すごくよかったです。動画の方向性やイメージしていることをちゃんと表現してくれる信頼感があり、実際に制作するクリエイターの方にもうまく伝わっていました。最初に上がってきたものが「あれ?」っとなることや、「こんなはずじゃなかったのに」ということもなくスムーズに進められている印象です。

Viibar 動画を制作する時に大事にしていること、意識している事はありますか?

神谷氏 目的をはっきりさせる事ですね。あとはターゲットを明確に伝えることかなと思います。教育産業は、業種柄、あんまり大胆なものは作りにくい。イメージが大事なので。クロスロードなどいいもの、上質なものを作って、自然と伝わるような雰囲気作りが大切です。その辺がちょっとでもずれてしまうと違和感があると思うので、クリエイターやViibarさんの担当の方にそこは汲んでもらっていると思いますね。

Viibar 競合がやらないような新しい取り組みや、競合動向により御社もやらなきゃといった考え方はありますか?

神谷氏 そうですね、両軸どちらもあります。ただやっぱり根本はZ会がお客様にとっていいと思ってもらえる事はなんだろうという軸で考えないといけないと思っています。なんとなく目立てばいいのかというとやっぱりそうでもなく、本当にお客様の喜んでもらえる顔が見えたらやるべきだと思います。競合が先に何をしようが、それをZ会がやればお客様が喜んでくれるならやる、という視点で考えていきたいと思っています。

Webならではの反応を追いながら、生活の中の動画体験に入り込む事を目指す

Viibar 動画の効果指標についてどのようにお考えでしょうか。

神谷氏 動画の指標をどこにするかという点ですが、やっぱり最終的には成果、どれくらいのお金をかけてどれくらいのリターンがあったかというところがマーケティングの部署だと求められます。ROIですね。現状としては、動画での直接の獲得、いわゆるCPAはもう一歩ブレークスルーが必要な印象もあります。

Viibar 効果測定はCPAを中心に見られているんでしょうか?

神谷氏 CPAはもちろん見ます。加えて、再生回数やシェアされた回数、視聴率はどれくらいだったかなど全般的に見てますね。あとは、SNSのつぶやきやツイートと言った定性情報もモニタリングしています。

Viibar ソーシャルリスニングみたいな事もされるんですね。

神谷氏 ただ、明確に指標があって、ここまで達成したから成功という見立てがまだ完全にしきれてないので、指標をつくるのは今後の課題ですね。

Viibar 御社はWeb動画だけでなく、CMをはじめとするマス広告も積極的に制作されているようですが、効果測定のやり方はそれぞれ違いますか。

神谷氏 最近は、動画もマス広告と似た考え方で、認知ベースでやっていくべきかなと思ってきています。ただし、動画はオンラインならではの文脈があるので、テレビCMを動画のプラットホームに流せばいいということではない。クリエイティブをどうするか、場面や対象者なども絞って作りこまないと、動画は成功したとはいえないと感じています。

成果を最大化するため、動画がどういう位置づけであるべきかということを、とにかく今は探っています。実際、YouTubeに出しても最初の5秒でスキップされてしまう現状があるので、差し込むのではなく、いかにユーザーの生活の中の動画体験に入り込んで、認知してもらうかが重要だと感じます。動画の出し方、動画の伝え方、配信の仕方などは常に模索していきたいと考えています。
「正直村」のようなクリエイティブにすると、30秒以上見た視聴率が、一般的な動画に比べて割と高めだったという事もあるので、今後も動画の最初で惹きつけるクリエイティブを使うと、最後まで見てくれる確率は上がるという認識はあります。

Viibar 他に行っている効果の検証方法はありますか。

神谷氏 ブランドリフト調査等をやっています。「正直村」で印象に残ったかという点は、いい数字が出てます。TrueView配信期間11日間には、その後の無配信期間11日間に比べ、「正直村」関連のキーワードについて、2.33倍の検索ボリュームがありました。課題なのは、Z会のブランド想起の数字です。動画が印象に残っているんだけれど、それがZ会だったと想起させる工夫はまだ改善が必要ですね。認知とか想起という点で考えると、ロゴをずっと出していればいいのか、といえば多分邪魔だし(笑)、どういうところで意識付けするのかは模索しています。

Viibar それに対して、社内で効果的なアイディアが出ることがありますか。

神谷氏 うーん。こんなことしたいよねっていうのはあっても、それを解決する手法はプロの方に相談しないと出ないですね。ただ大きな方向性としては、マス広告の効果が下がっている現実がある一方、その予算を単純にWebに集中させたとしても、既存のバナーやリスティングのやり方では、効果を出し続けていく事は難しい。そこで、ユーザーを上質な動画で広く囲いこみ、動画接触のプールを作った上で、獲得数も獲得率も維持したまま伸ばせるような戦略をこれから考えて行きたいと思っています。

Viibar カスタマージャーニーの入り口に動画を活用し、最終的に他の広告も含めて刈り取るというイメージですね。動画で、これからどんな挑戦をしていきたいですか。

神谷氏 今後やってみたいこととしては、現状の動画が比較的一方的な作りになっているので、ユーザーときちんとコミュニケーションをとれるようにしたいですね。簡単に言うと、動画が途中で止まって「どっちでしょう」など、ユーザーの手を動かしたり、考えさせたりというインタラクティブ性のある動画に関心があります。双方向だと、コンバージョンに寄与するのかどうか。結構最近よく見ますよね、選択肢を選んでいって、ストーリーが変わるというようなもの。そういった、双方向性を高めることで、さらに「自分ごと化」していただける可能性のあるものをつくってみたいです。

Viibar インタビューにご協力いただきありがとうございました!

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