環境保全団体WWFは、環境保全の支援者を増やすため、ネコ好きをターゲットにしたネコ科動物保護を訴える動画広告を制作。動画を活用して、科学的・理性的な環境保全団体であるというブランドイメージを保持しながら、支援を考えている方に対してエモーショナルに訴えかけることで、効率よく支援者を拡大することを実現した。

プロフィール

  • 河村翔河村翔(かわむら・しょう)1984年生まれ。2007年国際基督教大学卒業後、大和総研に入社。12年にWWFジャパンに入局し、これまで個人の支援者を増やすファンドレイジングに従事。チラシを用いたダイレクトマーケティングから、ウェブ広告などを活用したデジタルマーケティングまで支援者拡大のすべてを担当している。

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初めての動画でも、予想以上の成果を得られた

——当社との動画制作過程において困ったことや印象的だったことはありますか。

全体的に、クリエイターの方に非常によくやっていただいた、と感じています。とても丁寧な対応をしてくださったという印象が強いです。やはり、初めての動画制作ということで、こちらも不安な部分が大きかったのですが、それもすぐに解消されました。首都圏以外の方だと、全てリモートの作業になってしまうのではないかという不安もあったので、東京近郊にお住いの方という条件でお願いさせてもらったのですが、その結果、打ち合わせも実際にお会いして何回か行うことができました。

担当いただいたクリエイターの方も、NPOの動画を制作した経験をお持ちだったので、こちらの制作意図をしっかりと理解してくださり、意向をきちんと汲み取ろうとする真摯な姿勢や、団体のイメージに合わせたコンテンツを作るセンスも感じ、作業はスムーズに行えました。

——TrueView広告や公式Youtubeでのアップ以外に動画を活用されている例はありますか。

広告としてはTrueView、Facebookの2つです。あとは、それらの動画を見たお客様から、WWFのホームページでも視聴できるようにしてほしいという要望があって、サイトトップに動画を貼るという対応をしました。

WWF Japan

——KPIとして、この動画でどれくらいの費用をかけるのかといった目標設定や予算設定などありましたでしょうか。

今回実施した動画を用いたキャンペーンは、成果報酬型の広告を展開しているgooddoさんの引きあいからスタートしたプロジェクトだったので、こちらからは特に予算設定について要望していません。

TrueViewに関しては、利用するのが初めてだったので、テスト運用という意味合いが強かったと思います。動画制作費に関しては、賄えているという前提でプロジェクトが進んでいましたので、その後、単純にCPAが、どれくらいになるのかという判断をしていました。
紙のプロモーションと、Webのプロモーションとで分けて考えたときに、WebではCPAをこれくらいにしたいという目標値は決めていて、それにTrueViewが対応できるのかという観点でテストしました。その結果については、非常に良かったです。流石に何回も使用していると、徐々に効果は落ちてきてしまうのですが、ピーク時の値は十分でした。

運用をお願いしている広告代理店さんには、インプレッション効果をKPIとしたほうが良いというアドバイスもいただきました。しかし、結局、CPAは目標を少しオーバーするようなところで済んで、かつたくさんの支援者をいただくことができました。ですので今回のプロモーションは動画の貢献が大きいです。gooddoさんでは、しばらく間、1位をとっていたという話を聞いています。

Facebookでの投稿は、動画の再生数が62,000回以上になり「いいね!」も5,000件を超えています。正確に全ての投稿をチェックしたわけではないのですが、これは昨年1年間の投稿で、一番の「いいね!」の数だったと思います。

科学的というブランドイメージとエモーショナルな表現を両立させた動画は、内外ともに高評価

——「消えゆくトラを守ってください」といったキャッチーなコピーが印象的なのですが、こうしたコピーはどなたが考えられたのですか。

最初に作った紙のプロモーションでは、以前からずっとお付き合いのあるコピーライターやデザイナーが所属している広告代理店にお願いしました。動画ではそのコピーを活用しています。

——WWFさんとのオリエンテーションでは、動画で伝えたい内容やコンセプトについて、非常に丁寧な説明があったとクリエイターからきいています。そうした点は意識されていたのでしょうか。

私たちは科学的、理性的な環境保全団体であるというブランドイメージを大切にしています。絶滅に瀕している動物が「かわいそう」という共感は喚起したい一方、過度にエモーショナルな内容で煽るような動画だと、そのブランドイメージが崩れてしまうリスクがあるのではないかと考えていました。クリエイターの方が、そうしたもう一つのジレンマの問題も汲み取って、上手く絵コンテに落としてくださったなと思っています。

できあがった動画には、「かわいそう」という感情に訴えかける部分も含まれているのですが、過激に煽ることはしていない。具体的にこの点が良かったから、上手くいったという分析はできないのですが、非常に良いクリエイターさんとマッチングいただいたなと思っています。

内部から否定的な意見が出ることも予想していたのですが、他のセクションからも良い評価や反応をもらえました。ファンドレイジングで動画作るのが初めてで、これが失敗すると次は難しいと思っていたのでホッとしました。

WWF

——動画を活用したプロモーションを始める前と後では、何か変化したことはありますか。

キャンペーンは全体的に非常に上手くいきまして、ざっくり前年度の2倍程度の支援をいただくことができました。その中で、動画が貢献してくれた割合というのは非常に高かったと感じています。Facebookのコンバージョン数も伸ばしてくれましたし、TrueViewも上手くいきました。また、gooddoさんでも、いい数値だったので、非常に動画を活用して良かったと感じています。

もちろん、その成功は動画だけではなく、猫好きの方にネコ科の動物保護を訴えるターゲティングとセットとなっての結果なので、動画単体の効果を定量的に抜き出すのは非常に難しい。とはいえ、多くのユーザーの方からネコ科の動物を守ってくださいとコメントをいただき、Facebookでの投稿で「いいね!」などのリアクションをしていただけた。そうしたアクションをしていただいた方には、その後入会もしていただいた方が複数いらっしゃるということが分かっています。

今後の動画マーケティング戦略における課題と可能性とは

——今後は動画を含めてファンドレイジングに関する戦略をどのように進めていくのか、何か方向性があったら教えていただけますか。

アイデアベースでは、動画を活用したいくつかの企画が進行していますが、今後も動画を活用していくには、いくつか考えないといけない事があります。一つはコスト面と制作面における制約です。というのは、WWF全体としても良い動画素材が豊富にあるわけではありません。今まで制作してきた動画も、限られた素材の中から厳選して作りました。

WWFが動画を作るということになれば、やはり野生生物についての映像が必要になるのですが、動画のためだけに野生動物が生息する地域に撮影に行くことは、コスト面を考えると現実的ではありません。すでにある素材から選ぶとしても、NHKのスペシャル番組のようなハイビジョンクラスの映像に慣れてしまっている、目の肥えたユーザーが満足できるような解像度の映像を探し出すのは、非常に難しいのです。このように、コスト面や制作面での制約条件が多くありますので、そこをクリアする必要があります。

あとはWWFに共感していただくため、動物保護や環境保全に尽力している現地のスタッフのコメントなどをもっと紹介したり、今流行している360度動画を利用して、現地の広大なフィールドに思いを馳せてもらうみたいなことを想像しています。それができればもう少しサポーターや支援を考えている方に、臨場感を持って自然環境の実態について感じてもらえるのではないかと思っています。ぜひチャレンジしていきたいですね。

——自分があたかもその活動に参加しているように感じられる動画ということですよね。それは非常に拝見してみたいなと感じました。効果も高そうですね。 この度は、非常に参考になるインタビューをありがとうございました。

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