化学メーカーの宇部興産株式会社は、認知度アップのために若年層にターゲティングした動画制作を実施。「うべこさん」というユニークなクリエイティブが若者を中心に話題となり認知度が大幅に改善、採用活動にも効果を発揮。動画のクオリティの高さは社内外でも話題となり、社員の士気にも好影響を与えている。

プロフィール

  • ube宇部興産株式会社 経営管理室 IR広報部 主席部員 工藤康人氏
    1977年生まれ。地方紙記者、食品メーカーの宣伝担当、航空機メーカーの購買などを経て2013年に宇部興産へ。グローバルサイト、社外広報、宣伝などを担当している。

若年層への認知度アップを目的に、Web動画にチャレンジ

___工藤様の業務内容についてお聞かせください。

私は経営管理室のIR広報部という部署に所属していて、広報と宣伝を兼務するような形で業務を担当しています。広報はニュースリリースを含めた国内外向け広報を、宣伝は、企業広告や一般的な宣伝事案を中心に企画運営しています。自社Webサイトの企画運営は、この両方に重なる仕事になります。

___今までも動画制作に取り組まれていたのでしょうか?

弊社の創業地である山口県内でテレビCMを放映している他は、特に動画制作は行っていませんでした。CM以外では、会社案内のビデオを制作したくらいでしょうか。

___今回はどうしてWeb動画の制作をしようとお考えになったのでしょうか?

Web動画の制作は私も今回が初めてです。最初に宣伝業務がアサインされたのが昨年なのですが、その際に、BtoB企業である弊社が、なぜ宣伝しなければいけないのかということをチーム全体で考え直しました。その中で課題として浮き上がってきたことが、世間一般の弊社に対する低い認知度の改善です。山口県内では、テレビCMも放映しておりますので、地元の方には認知していただいていると思います。しかし、それ以外の地域では、企業名があまり知られていないのが現実です。

また、弊社は化学やセメントを扱う会社ですので、そうした関連業界に勤務されている方の認知度はある程度高いのですが、最終製品のメーカーさん含めて、それ以外の様々な業界の方からの認知度が低いということも課題の一つでした。

さらに、特に若年層になるにつれて極めて認知度が低くなる傾向も、様々な調査で明らかになってきました。これは今後の採用活動にも影響を及ぼす事柄なので、社内でもなんとかしなければいけないという課題感を持っており、いろいろ考えた上で、やはり動画制作が有効なのではないかという流れになったのです。

___若年層の認知を上げる施策として他にも施策があったと思うのですが、なぜWeb動画制作を選んだのか理由をお聞かせください。

認知度に関しては一般の調査会社のデータを参照したのですが、そこでは特に20代以下の認知度が極めて低いことが判明しました。したがって今回の施策は、ターゲットに20歳前後の年齢層をイメージして企画を検討しました。

若年層にどうやってリーチするかを考えるため、日常的にどういう方法で情報収集しているのか調べると、やはりスマホやタブレットでゲームやネットブラウズしている時間がテレビを見る時間も圧倒的に多いというデータが出てきました。また、スマホやタブレットの様々な用途の中で、動画視聴がかなり上位に入ってきているということも分かりました。若年層が、Webで動画閲覧をしているのであれば、そこになんとか入り込めないかと考えたのです。

社内の意見を丁寧に汲み取ることが動画クリエイティブへの評価につながる

___今回の動画制作について他社と比較検討されましたか?

はい。今回の動画制作は、コンペ形式で3社さんにお声がけさせてもらいました。そのコンペで提案したいただいた演出コンテを、社内にいる理系の若い女性社員25人に見せアンケートを取りました。全部で14案のコンテ案を見てもらって、その中で面白かった上位3位と、一番気に入らなかったものを挙げてもらいポイントをつけてもらうといったものです。

その結果、Viibarさんから出された「うべこさん」の案がダントツでした。この案は一番良かったという人も多かったのですが、実は一番イヤだったという人も少なくありませんでした。うちの社風に合ってないという意見や、単純にホラー嫌いという理由がありましたね。

しかし、知名度アップが目的でしたので、動画に対する評価がプラスかマイナスかということは大きな問題ではなく、とにかく印象に残る案を選ぶことが大事だと考えたのです。こういった賛否両論の反応は、案が出た段階で予想はしていたのですが、どちらにしても、いろいろな意味で多くの人に刺さったなという印象があったので「うべこさん」の案しかないだろうということになりました。

___理系の女性に的を絞ってリサーチしたのは、採用でも女性に来てほしいからなのでしょうか?

どこの同業他社もそうだと思うのですが、理系の女子学生の絶対数が少ないので、女性の応募数が少ないのが現状です。ですので、女子学生に対する訴求を強く意識していました。

ここ何年かは女性の採用に非常に力を入れていますので、女性社員の数は増えてきているのですが、もともと男性が多い業界なので、特に技術系の職種を中心に、まだまだ十分ではないと考えています。

もちろん、特定の業種だけを女性に任せるといったことではなく、生産や開発の現場も含め、どの職種も男女比1対1くらいになるのが理想だと思うのですが、現状ではまだ難しいので、女性に対する認知度や好感度をできるだけ上げていきたいという思いはありました。

___今回の「うべこさん」の動画は非常にチャレンジングな内容だと思うのですが、社内で反対意見などはありませんでしたか?

ブランディングは採用に直結するので、今回の動画について事前に人事に相談していました。人事の意見としては、重要なことはまず企業名を覚えてもらうということで、第一印象は後々まで残るものではないので心配する必要はないのではないかというものでした。その後の印象は、会社説明会などでの伝え方でも変えていけるということも言っていましたね。

私が一番緊張したのは幹部に説明するときでした。幹部も真面目な人が多いので「こう言われたらどうしようか」といった具合に想いをめぐらせ、眠れない日々が続きましたね(笑)。それが、見てもらったら「面白い」という意見が大半で安堵しました。

弊社の2018年度までの中期経営計画のテーマは「チェンジ&チャレンジ」です。幹部から「若いメンバーで決めたのだから、それで良いのではないか」とすんなり言ってもらえました。また、中期経営計画のテーマに沿って、今までと違うことをやっていかなければいけない時期なので、ガンガンやっていくべきだと言ってもらえたことは大きかったと思います。ブランディング的にも、そういう新しいことに挑戦できる企業風土だということが伝わるのであれば、プラスに働くという考えもありました。

一般社員からも厳しい意見が出ることを覚悟していたのですが「よくやった」「面白い」といった意見を数多くもらいました。今までと違うことをしたいという思いは、社員の中にもあったようなので、いい意味で刺激になったのかもしれませんね。

後編に続く

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