ETFは「ここ数十年のなかで最も成功した金融商品の一つ」とまで言われており、特に米国を中心に資産形成の手段として急速に普及している。しかし、日本ではETFの認知はまだまだ低いというのが現状。そこで東京証券取引所は、ETFの普及促進を図るため、「東証マネ部!」というオウンドメディアを立ち上げる。また、動画マーケティングの観点ではETFを知らない人に対して、ETFの名前を認知させるため「広告動画」と、ETFの特徴メリットを分かりやすくアニメーションで説明する「解説動画」を制作した。これにより、ETFの認知率が向上し、商品への理解が深まったと社内外から高い評価を得ている。

プロフィール

  • tosho株式会社東京証券取引所 金融リテラシーサポート部 吉田貴弘氏
    1987年生まれ。株式会社東京証券取引所に入社後、マーケット部門を経て2014年にオンライン証券へ出向しマーケティング・広告業務を経験。東証へ帰任後は出向先での経験を活かし、マーケティング施策の企画等を担当している。

__動画制作過程で印象に残ったエピソードはありますか?

やはり、社内合意形成が難しかったですね。プレゼンをすれば、動画を使うのは良いけど、どのように使うのかという部分が必ず問われます。そこで、私は、社内で動画活用の目的を2つの観点に整理して説明しました。一つは、認知率が低いETFの名前を覚えてもらうためのテレビCM的な「広告動画」、もう一つは、広告動画でETFに興味を持ってもらった人に商品のメリットや仕組みを、わかりやすく解説するような「解説動画」です。このように2つの観点を整理したことで、上層部からも理解してもらうことができました。

__今回の動画について、社内での評判はいかがでしたか?

経営陣からの発案で、社内の若い感性を拾い上げる観点から入社1年目~3年目の若手社員を中心に集めた、「ETF若手サポーターズ」というチームを作っています。彼らには、今回の動画制作においても、絵コンテの段階で企画を見てもらって、若年層の反応を予測しました。もちろん彼らに支持されたクリエイティブを採用したのですが、出来上がった動画についても、評価は高かったですね。

また、上層部の反応も良かったです。今回の動画企画は、昨年末に社長まであげていて、年末年始に流しますということも伝えたのですが、動画クリエイティブ自体は、経営層レベルにも非常に受けました(笑)特に「広告動画」のほうは、役員の感性につき刺さったようです。

プレゼンの場でも「これどこで作っているの?いくらで作れるの?」みたいな話題が出ました。動画≒テレビCMというイメージが強かったのか、実際に今回の動画制作にかかったコストを伝えたところ、そんなに低コストで制作できるのかと驚いていましたね。

動画クリエイティブが社内から高い評価を得る

__今回の動画について、費用対効果やKPIについては、事前に設定されていたのでしょうか?

費用感がそもそもあまりない状態だったので、効果について事前に細かな設定は行っていませんでした。アニメーションによる「解説動画」が4,500~4,600くらいの視聴数になっているのですが、まだローンチから3ヶ月半くらいしか経ってないことを考えると結構見られているのかなと思います。

また「解説動画」は東証マネ部!にも置いて、そこでも見られる状態にしています。別途調査会社に依頼している第三者モニターを使ったリサーチにおいて、サイトの評価に関して、動画の評価が高かったということが分かっています。特に、狙い通り、投資関心層(投資初心者)に刺さっていました。

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http://money-bu-jpx.com/

またYoutubeで配信をした広告動画については、動画視聴者がETFについて検索する頻度は、対象動画を見ていない人に対して23.2倍にもなりましたので、効果はとても高かったと考えています。

そうした良いデータがある一方で、周知や集客の部分で課題も感じました。例えば、YouTubeでは動画視聴後に「詳しくはこちら」といったボタンが設定できるのですが、ここからの送客数が想定以下でした。私の説明不足な部分も大きいのですが、経営陣は、KPIに東証マネ部!への送客を重視していました。しかし、YouTubeは次に自分が見たいものがその先に待っているので、直接的なコンバージョンが難しく、金融商品であることが、それに輪をかけています。動画制作の効果を正確に計測する上では、視聴率をKPIにすべきだったと反省しています。次回は、間接効果として流入数が検索で上がっているといったようなことも、盛り込めたらいいなと思いますね。

__今回の動画は、認知率の向上と金融商品の理解という課題に対して、どれくらい解決に繋がったとお考えですか?

認知度はテレビCMと同様に、Web動画も、資金をつぎ込めば上がっていくと思います。今回のYouTube広告に関しても、弊社としては、かなり思い切った予算を使ったほうだと思います。分析から、実際に約130万人が最後まで動画を視聴してくれたということがデータからも分かっていますので、認知率の向上には一定程度繋がったと思います。

視聴率に関しても、いわいる一般的な金融商材のよりも、高めに出ていたので、そこは非常に良かったのかなと思います。
ETFの理解に関しても、「解説動画」の視聴数も順調に推移しておりますし、モニター調査でも良い結果が出ているので、一定の効果は出ていると考えています。

さらにETFの認知率や理解を高めるための今後の施策

__ETF を活用するユーザーの動機は、どのようなものがあるのでしょうか?

ETFを保有したいという動機は様々なものがあると思うのですが「現在、銀行にお金を預けていても、ほとんど利子が付きません。それであれば、資産形成という文脈でETFを試してみませんか?」「ETFは、2万円代から買える商品がほとんどなので、ぜひ体験されてみてはいかがですか?」といった感じで投資関心層に働きかけています。

もちろん、金融商品なので損得はあるのですが、「コストが安い」「少額からはじめられる」「透明性が高い」「分散投資ができる」といった様々なメリットがあるので、金融商品の入門編としてもオススメです。

__東証マネ部!やYouTubeのオフィシャルのアカウント以外で、今回の動画を活用された例などありますか?

昨年末に証券会社さんとタイアップしたセミナーで今回の動画を流しました。セミナー参加者に対して動画を見た感想を定量的に測ってはいないのですが、反応はけっこう良かったと思います。

また、動画そのものではないのですが、動画のアニメーションイラストを利用してムック本を作りました。Viibarのクリエイターさんに、そんなことまで頼んでしまって良いのかなと思ったのですが、綺麗に仕上げて下さって非常に良かったですね。

__今後どのように動画を活用していこうと考えられていますか?また、次に挑戦したい動画の内容などがあれば教えてください。

今回の取り組みに関しては、社内でもクリエイティブ自体の評価が高いですし、実際に数値にも良いデータがあらわれているので、そこはかなり前向きに捉えています。来期も継続して動画を作りたいと思っています。

内容については、今回の「広告動画」は、面白系だったので、次はテイストを変えたりして試してみたいですね。「解説動画」に関しては、普段、私たちがセミナーなどでプレゼンテーションしている内容を、約2分半のアニメーションにギュッと凝縮。ETFという金融商品をわかりやすく説明できており、セミナーなどで流した反応から、若年層だけでなく中高齢者層からも非常に評価が高かったです。今、良いアイデアがすぐに出てこないですが、また違った観点でETFを解説できる方法もあれば、Viibarさんに教えてもらいたいですね。

※本事例は、2017年1月に実施したインタビューに基づいて作成しました。
※本事例は掲載時点のものです。

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