ETFは「ここ数十年のなかで最も成功した金融商品の一つ」とまで言われており、特に米国を中心に資産形成の手段として急速に普及している。しかし、日本ではETFの認知はまだまだ低いというのが現状。そこで東京証券取引所は、ETFの普及促進を図るため、「東証マネ部!」というオウンドメディアを立ち上げる。また、動画マーケティングの観点ではETFを知らない人に対して、ETFの名前を認知させるため「広告動画」と、ETFの特徴メリットを分かりやすくアニメーションで説明する「解説動画」を制作した。これにより、ETFの認知率が向上し、商品への理解が深まったと社内外から高い評価を得ている。

プロフィール

  • tosho株式会社東京証券取引所 金融リテラシーサポート部 吉田貴弘氏
    1987年生まれ。株式会社東京証券取引所に入社後、マーケット部門を経て2014年にオンライン証券へ出向しマーケティング・広告業務を経験。東証へ帰任後は出向先での経験を活かし、マーケティング施策の企画等を担当している。

個人投資家を活性化するためのマーケティング手法の一つとしてETFの認知率向上を図る

__吉田様の担当されている業務内容についてお聞かせください。

弊社では3年ごとに中期経営計画が立てられるのですが、2016年度からの中期経営計画に合わせ、同年4月に設立された金融リテラシーサポート部という部署に、私は所属しています。

現在の中期経営計画では、個人投資家層を活性する施策の一つとしてETF(Exchange Traded Fund:上場投資信託)という金融商品をピックアップし、保有主を現在の50数万人から倍増させる定量的目標を掲げています。これは、行政から出される指針とも合致しており、政府もかれこれ10年以上「貯蓄から投資(資産形成)へ」というスローガンを掲げて国民に働きかけてきている中、弊社としては、資産形成におけるETFの活用を推進しています。

部内には、修学旅行や社会科見学などで東証の施設を案内するチームや、小中高大の生徒や学生に対して金融教育を行なっているチームもあります。一方、私の担当している業務は、このETFに関するマーケティング全般です。見学事業や投資教育をセミナー等を開催して対面で行うことも、金融リテラシーの向上のために非常に重要なアプローチです。ただ、それに対し、デジタルで金融リテラシーの向上を図っていくようなアプローチ、特に個人投資家へのデジタルマーケティングは、弊社が今まであまり積極的にやってこなかった領域でした。

ETFというのは、東証に上場している商品なので、弊社として推したい商品の一つです。ところが、このETFは認知率が低い商品であるということが市場調査でわかり、認知率の向上を図る施策を行う必要がありました。昨年の12月頭には「東証マネ部!」というオウンドメディアを立ち上げました。今回の動画制作もそうした一連のマーケティングにおける文脈の中で実施することになったものです。

__動画を制作してみようと思ったきっかけについてお聞かせください。

前述の市場調査で、日本の人口動態に基づいて分析をした結果、株式・投資信託などの他の金融商品と比較してETFの認知率は低く、約25%であることがわかりました。実に、成人の4人に1人しか、ETFという商品を知らないという現状なのです。知らない商品の購入を検討する人はいないので、認知率の向上が必要不可欠です。お金をかけて、テレビCMをバンバン流せば、認知率は上がると思いますが、限られたリソースや予算の中で対応していく必要がありました。

この市場調査からは、日本人の約6割が、そもそも全く投資や金融商品に関心のない人であることも分かっています。これは、見方を変えれば、残りの4割の人は、なんらかの関心を抱いていることになります。そうした人たちを私たちは投資関心層と呼んでおり、そこにターゲットを絞って、まずは認知率を上げていこうと決めました。

そこで、投資関心層の人たちが見ているメディアについても市場調査を行い、YouTubeをはじめとした動画系のメディアが多く見られていることがわかりました。特に若年層に、その傾向が強かったので動画活用を検討することにしました。

__特に、若年の投資関心層にターゲットを絞っているのでしょうか?

特に、若年の投資関心層に的を絞ったわけではありません。ただ、現在、ETFを保有している方の多くは、金融商品にある程度リテラシーがあって、株や投資信託などを10年以上やっているという中高齢のベテランプレイヤーです。

投資家の高齢化傾向が強まる中、パイを広げる意味でも、やはり若い人にやってもらわないと、株式市場全体がシュリンクしていくだろうという業界全体の課題がありました。ですので、すべての年代の投資関心層が受け入れやすいように今回の動画も制作しました。ただ、若年の投資関心層をより強く意識していたことは確かです。

2つのポイントに整理して動画活用の目的を説明したことで、動画マーケティングの重要性について上層部を説得

__Viibarを知っていただいたきっかけについて教えてください。

私は約2年間、オンライン証券に出向し、そこでデジタルマーケティングを担当していました。オンライン証券のマーケティング部門には、連日業者から営業電話がかってくるのですが、私は部署内で一番若かったので、よく電話対応をしていました。そんな営業電話の対応中に、Viibarさんを知り、営業の方とお会いすることになりました。

一つ言えるのは、以前から雑誌やネットで、これから動画マーケティングが来るという情報を頻繁に目にしていたので、興味を持っていたのは確かだということです。興味を持っていろいろネットで検索して調べたところ、クラウドソーシングで安くて高品質な動画制作ができる会社が数多くあることに気づきました。こうした費用感であれば証券業界でも導入できるのではないかと思うようになり、出向していたオンライン証券で動画活用をしてみようと社内で発案し、なんとか企画が通り実行しました。

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__東証にもどられてからも動画を活用されたのは、市場調査で動画系メディアが見られていることからでしょうか?

実は、私の中にすでにストーリーができていました。出向先のオンライン証券では、2本の動画制作に携わり、それほど規模が大きいものでないにせよ、成功経験がありました。ですので、弊社内でも、2016年の4月に新しい部署に配属されてからは特に、動画を活用したいという思いがありました。

しかし、取引所のような組織は、長い間、あまりデジタルマーケティングアプローチをしてこなかったため、経営陣にデジタルマーケティングについて理解してもらうのは難易度が高いというのも認識をしていました。そこで、前述の市場調査に関しても調査設計の段階で、動画の活用という文脈を入れ込みました。そうした根回しが功を奏し、実際にViibarさんに発注する流れができました。

後編に続く

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