企業がサービスや商品を流通させるために行うマーケティング活動。特にそれが生活者向けの場合、広告を行う大前提として知っておくべき事実があります。それが「世の中の流通情報量」。本記事ではその内容の重要ポイントをかいつまんでご説明します。

人間の情報処理能力は限界を超えている

世の中の流通情報量

 最初にこちらの図をご覧ください。

図01

 少し古い統計なのですが、こちらは総務省が行った「情報流通インデックスの計量」調査(H23年8月)の発表資料から抜粋したものです。過去30年に渡って日本国内の情報流通量を計測してきた情報通信政策研究所が、「流通情報量」と「消費情報量」の変化をまとめてくれています。

 ・情報流通:各メディアを用いて、情報受信点まで情報を届けること(受信によって流通が完了)

 ・情報消費:情報消費者が、受信した情報の内容を意識レベルで認知すること

 図を見ていただくとわかる通り、平成13年(2001年)から平成16年(2004年)くらいまでは世の中に流通している情報の量と消費されている量がほぼほぼ同じ量だったのに対し、平成17年(2005)年を境に流通情報量が急激に増加しはじめ、平成21年(2009年)には突き抜けています。その量の伸び率は、平成13年(2001年)を100とした場合の198.8%。ほぼ倍です。

 一方、情報消費量はというと、多少の伸びはあるものの、ほぼ横ばい。つまり、「人が処理できる情報の量はあまり変わっていないのに、世の中に出回る情報ばかりが増えている」ということになります。

 ではこの流通情報量の増加は何によるものなのでしょうか。もちろん予想は付くと思いますが、これは「インターネット」によるものです。下図をご覧ください。

図02

 インターネットの平成21年(2009年)の流通情報量は、13年と比べて約71.7倍に!流通する情報量の増加は、圧倒的にインターネットによる影響が強いことがわかります。

 一方、消費情報量を見てみると、

図03

  平成13年(2001年)から平成21年(2009年)までの間に約2.3倍となってはいるものの、その消費量は流通量には到底及びません。しかも平成21年(2009年)には前年比で約82%減少してしまっています。

 例えばインターネット上に、「新商品発売しました!」という広告を打ったとしても、その情報が生活者に届く確率は、13年(2001年)と比較してわずか0.046%。これを情報の投下量を増加することで平成13年(2001年)当時と同じくらい届くようにしようとすると、総流通量に占める自らの情報シェアを現状の約2,165倍に増やす必要があるとのこと。そんなコスト、どこから捻出すればよいのでしょうか…。

 つまり今の時代は、届けたい情報が届かない状況となっており、その傾向はこれからも続くと思われます。マーケターとしては、その前提を認識しておく必要があります。そしてインターネットにおいては効果検証がしやすく、費用対効果も測りやすいですが、そもそも届かない状況になってきている昨今では、その「情報の届け方」にテクニックが必要になりそうです。 

参考サイトはこちら

総務省の統計毎日新聞による分析

ぜんぜん広告が届かない!

プランニングの重要性の高まり

 世の中の情報量の異常なまでの増加については今まで触れてきた通りですが、実は情報量の増加以外にも「広告が届きにくい」理由があります。例えば、

 ・広告の信頼性の低下(情報量が増えたことで、押し付ける広告=うざい、ものに)

 ・商品バリエーションの増加(お茶も缶コーヒーも種類が豊富。その中で新商品の存在を知ってもらうのは一苦労)

 ・エンタメの増加(テレビだけじゃない。動画やゲームコンテンツなどユーザーのエンタメライフスタイルは多様化)

 ・インターネットにおける情報摂取方法の変化(アプリもあるし、SNSもある。口コミの信頼性も増加)

 ・メディアの増加(どれが誰に効くのか複雑に)

 また、最近のプランニングから忘れられがちな「インターネットを使わない人」の存在もあります。日本におけるインターネット普及率は約80%。下記地図でも日本の普及率は世界的に高めではありますが、トップクラスではないことがわかります。

世界地図

引用サイトはこちら

 日本は超高齢化社会。もちろんシニア層にもインターネット利用者は多いのですが、それでも普及率は60-64歳で73.9%、65-69歳で60.9%、70代で42.6%、80歳以上で14.6%(総務省による通信利用動向調査)。そして4人に1人が65歳以上という日本の人口構成比。日本には意外とインターネットを活用しない人が多いのです。ただ、この方々が買い物をしないわけではありません。ターゲットを考える際にはこの方々の存在を忘れてはいけないことがわかります。

 さらに、

 ・インターネットは使うが、日常的には使わない

 ・インターネットは使うが検索は使わない

 ・SNSは使わない

 など、インターネットが普及している層でも、その使い方は様々。生活者のライフスタイルは複雑の一途をたどっています。自社の商品やサービスがどういったライフスタイルの生活者をターゲットにするか、よく考えた上での訴求の方法やタッチポイントの作り方、そのプランニングに技術が求められる時代になっています。

まとめ

伝わらない時代の心構え

 ①まず広告は届かない、というスタンスで臨む必要がある

 ②インターネットをしない人もいることを意識する

 ③インターネットを利用する人の中にも、その利用の仕方はさまざま

 ④ターゲットとなる生活者をしっかりと見定め、ライフタイルに合わせたタッチポイントを模索する

 ⑤ターゲットインサイトを理解し、どうやったらその情報(広告)が広がっていくか考える

 ひとまずこんなところでしょうか。

 ちなみに、こんな伝わらない状況の中で、今「動画」が注目されているのには、情報に出会ったときの「情報伝達の質」が高いからというのが理由に挙げられるかもしれません。視覚だけのポスターやバナーとは違い、音も雰囲気も感情さえも伝えることができます。また、見る側も「1分で動画でさくっと説明してくれるなら見てみるか」というハードルの低さもあります。

 ただ、動画を使うことは手法であって目的ではないので、やはりターゲットと目的、コンセプトをきちんと固めてからのプランニングが重要になることは間違いなさそうです。

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