1.インフォグラフィックとは

インフォグラフィック(infographics)とは、図表やグラフなど視覚的に整理されたイメージを使用し、誰もが素早く情報やデータを理解できるようにした表現手法の一つである。この手法はアイコン、エンブレム、ピクトグラム、イラストといったイメージを素材に使っているので、言語が異なる人々や、言葉が発達段階の子どもたちに対しても情報を伝えることができる。また、文字だけではなかなか分かりにくい概念的な情報、専門的な情報、未知の情報なども伝えやすい。

近年は、リッチなWebコンテンツとして、インフォグラフィックを効果的に活用する事例が増え、シンプルなイラストにインパクトのあるフォントでテキストを挿入するといったスタイルが確立されている。一般的にネット広告でインフォグラフィックと言えば、こうしたスタイルの表現手法のことを指す。

2.動画インフォグラフィックとは

最近は、動画インフォグラフィック(ビデオグラフィック)という、動画を使ったインフォグラフィックをプロモーションに採用する企業も増えている。動画インフォグラフィックは、消費者が企業の発信する情報に向けるアテンションが短くなる中、イラストに動き、音楽、ナレーションなどが加わることで多くの情報を短時間に整理して伝えられるようになっており、視覚的な表現手法として非常に有望といえる。

また、後述の事例からも分かる通り、動画インフォグラフィックの制作にあたっては、データの取捨選択、イラストのテイスト、文字の太さ、装飾などによっても、伝わりやすさが全く変わってしまうので、クライアントと動画クリエイターが、共同で制作に取り組むことが重要だ。

3.動画インフォグラフィック活用事例12選

ここではポイント別に動画インフォグラフィックの活用事例12選を紹介する。

(1)データを伝える

数字そのものを効果的に使った事例

Panasonic

Panasonicが作成した「オリンピックが楽しくなる数字のお話」というキャンペーン動画。この動画では、同社のワールドワイド・オリンピック・パートナー企業としての実績を数値データで伝えている。また、自社に関するデータを伝えるだけでなく、オリンピック自体の情報や、同じくパートナー企業であるコカコーラ社や、VISA社のデータも組み込ませることで、オーディエンスの興味を惹く内容となっている。

図表・グラフを効果的に使った事例

Represent.us

Represent.usというアメリカの汚職問題に対する反対活動を展開するNPO法人が制作した「Corruption is Legal in America」というキャンペーンの動画。汚職に関する金銭のデータを図表・グラフを使いイメージで伝えることでキャンペーンの意義を的確に示している。再生回数は、880,000回を超えており(2016年11月現在)キャンペーンとして一定の効果を示した。

埼玉県保健医療部疾病対策課 自殺予防キャンペーン

埼玉県保健医療部疾病対策課による自殺予防キャンペーン動画。「都道府県別の自殺者数」「主要国の自殺死亡率」といった自殺に関する統計データを、地図やグラフを使って視覚的に伝えることで、自殺予防の重要性を訴えている。この動画は5分近い長さではあるが、その再生回数は、130,000回を超えている(2016年11月現在)。

ヨコハマR(リデュース)委員会 REDUCE THE FOOD LOSS

ヨコハマR(リデュース)委員会による「REDUCE THE FOOD LOSS」というタイトルの、食品ロス問題をテーマにした動画。グラフとピクトグラムを使って日本における食品ロスの多さを、世界の飢饉・食料支援などと対比させながら分かりやすく伝え、同活動の重要性を説いている。
カロリーメイト https://www.youtube.com/watch?v=yGSMdX_Xt5Y 大塚製薬の主力商品「カロリーメイト」のプロモーション動画。商品パッケージのテーマカラーを上手く使って、ブランドイメージを保ちつつ、グラフとピクトグラムで、商品に関する様々なデータを分かりやすく紹介している。

(2)関係性を伝える

地図を効果的に使った事例

UN Human Rights

国連が制作したLGBTの人権に関する「A History of LGBT rights at the UN」というタイトルのキャンペーン動画。世界地図で、同性愛を法律で禁じている国々や、同性婚やパートナーシップ制度を認めた国々などを視覚的に伝えることで、LGBTの人権に関する世界的な流れと現状を伝えている。さらに、性的指向や性的違和に対する差別撤廃を訴えかけ、偏見や誤解の多いLGBTの人権に関する問題について啓発を促している。人権問題という非常に堅いテーマを扱っている動画だが、その再生回数は、全世界で80,000回を超えている(2016年11月現在)。

住友商事

住友商事がリクルーティング用に制作した動画。日本独特の企業形態である総合商社は、その事業内容が具体的にイメージしづらい側面があるが、この動画では、世界各国で様々なビジネスを展開している同社の事業内容を、地図や各国のイメージイラストで可視化し、明快かつ簡潔に伝えることに成功している。採用動画というターゲットが限定された動画にもかかわらず、再生回数は23,000回以上(2016年11月現在)となっており、ブランディングにも一役買っていると考えられる。

年表や設計図を効果的に使った事例

BBC

BBCが制作した「Titanic – for BBC History」というインフォグラフィック動画。この動画は、プロモーション動画ではなく純粋なコンテンツとして制作されている。年表、地図、設計図などを使うことによって、タイタニック号の歴史、タイタニック号の沈没した場所、客船の構造などの膨大な情報を詳細に伝えているが、動画尺は5分30秒弱のコンパクトなサイズに収まっている。

(3)ストーリーを伝える

ピクトグラムを効果的に使った事例

ソニー損保

ソニー損保による「あるクルマの一生」をテーマにした動画。クルマの一生を通して、「購入金額」「ひと月あたりの走行距離」「洗車回数」「ドライブ中に歌った経験など」といった日本国内の自動車に関するデータを硬軟取り混ぜて紹介している。また、ピクトグラムで自動車を擬人化し、ストーリー仕立てすることで、オーディエンスが感情移入しやすくなり、自動車保険を扱う損保会社としてのイメージアップにも成功している。この動画の再生回数は60,000回を超えている(2016年11月現在)。

国境なき医師団

国境なき医師団が制作した「スワジランド 子どもたちをHIVから守れ」というキャンペーン動画の第二弾。ピクトグラムで、スワジランドで展開中のHIV/エイズ対策「PMTCT B+」という革新的な取り組みのシステムを伝えている。このように、最新のHIV/エイズ対策という、専門的で未知な情報・データ・知識を、誰にも分かりやすく紹介できるのも動画インフォグラフィックのメリットである。

セイコー

セイコーがリリースした新商品「GPSソーラー」に関するキャンペーン動画。利用シーンをピクトグラムでイメージさせながら、搭載機能や操作性に関するデータを効果的に挿入し商品の特長を紹介している。

イラストを効果的に使った事例

MDG Advertising

MDG Advertisingという広告会社のプロモーション動画。「Social vs Search Smackdown: A Battle of Internet Marketing Titans」と題し、アメリカのプロレス団体WWEが毎週放送しているテレビ番組「Smackdown」をパロディ化したイラストによって、インターネット・マーケティングにおけるソーシャルメディアとサーチエンジンマーケティングを比較した動画である。ピクトグラムよりも具体的なイラストを用いられているのでキャラクターに特色がある。また、プロレスの試合のようにラウンド制で展開されるので、リズムよく比較データを検証し、オーディエンスを飽きさせない構成になっている。

写真素材とインフォグラフィックを組み合わせた事例

Sky Cinema

2013年公開された「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(レオナルド・ディカプリオ主演)というコメディ映画のプロモーション動画。インフォグラフィックでは、ピクトグラムやシンプルなイラストによるアニメーションが用いられることが多いが、この動画では写真もイメージに使用して、デザインの要素としてインフォグラフィックを活用している。粗い写真に、文字や数字を装飾的にレイアウトすることによって、新聞を彷彿させるテイストのデザインとなっており、映画のテーマともマッチングする広告クリエイティブになっている。

このように、動画インフォグラフィックは、数多くの情報やデータを正確に伝えたいといった目的には最適の手法の一つである。また、自社に動画コンテンツの素材となる画像やイメージがない場合といった場合も、動画インフォグラフィックで、数値や文字をビジュアル化し、ユーザーの心に訴えかける動画を制作することも可能となるので、ぜひ選択肢一つとして検討してみてはいかがだろうか。

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